あの道へ・・あの時へ・・もう一度バイクに乗って・・。
左半身が不自由になり、心臓に欠陥を抱え、安静に過ごす毎日から抜け出してもう一度バイクに乗りたいと考えるようになったオッサンのつぶやき。
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消えない原風景


打ち寄せる波を見ていると、わずかに胸が痛む・・・。

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いつまで見ていても飽きないほど波を見ているのが好きだ。
でも、何故か胸の奥に小さな痛みを感じるのだ。

強い風が飛沫のカーテンを作り出す時、
その痛みはよりはっきりとしたものになる。


生まれた家が浜辺にあったので、海を見ない日はなかっただろう。
波の音を聞きながら眠った記憶も確かにある。

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物心がつき始めた頃、ある老夫婦のお宅に預けられていた。
私は末っ子で、年の離れた4人の兄がいる。

10歳年上の、すぐ上の兄が私を背負い、通学途中に預けて行った。
1日中外で働く両親に、私の面倒を見る余裕などなかったのだ。

そんな生活がどのぐらい続いたのかは分らないが、
ある日、もう1人別の子を預かるようになったことで、
私はもうそのお宅に寄り付かなくなったらしく、
預けてもいつのまにか逃げ帰って来たという話だ。

激しく波が打ち付ける浜辺を、泣きながら歩いたことを覚えている。

09320c.jpg



小学校に通うようになった頃、海を見ることが多くなった。
1番上の兄には、自分が一家を支えているのだという強烈な自負があったのだろう。
働き手にならない私を「ごくつぶし!」といって責めた。

海が荒れて漁に出られない日は、その苛立ちが頂点に達した。

「このごくつぶしめ!」

その言葉に追い立てられるように渚へと走った。

兄の言葉と「生まれて来なければ良かった」という思いが交錯し、涙が落ちた。
荒れ狂う波が、深い海の底へと連れて行ってくれるような気がした・・。

09320d.jpg



飛沫を浴びてびしょ濡れになり、泣き疲れた私を番屋へと連れ帰り、
風呂に入れて寝かせてくれたのは、船の乗組員や浜で働く女工さん達だったそうだ。
夜になって、母が何度も様子を見に来ていたらしい。
母も眠れぬ夜を過ごしていたのだろうと想像したのは大人になってからだ。


後年、兄の助けや応援がなければ今の私は存在しないかも知れない。
特に私が病に倒れてからの兄はとても優しく、言い尽くせぬ感謝の思いがある。

09320e.jpg



打ち寄せる波を見ていると、わずかに胸が痛む・・・。

幼い頃の悲しい記憶は、月日の波に洗い流されることもなく、
歳を重ねるごとに鮮明になって来るようだ。


小さな胸の痛みとともに、消えない私の原風景・・・。



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テーマ:懐かしさを覚える情景 - ジャンル:写真


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